1946年5月7日。
戦後の焼け野原の東京で、
井深大氏と盛田昭夫氏が「東京通信工業」を創立した。
資金も設備もない。
あるのは 技術への情熱と、世界を変えるという野心 だけ。
この小さな会社が、のちに SONY となり、
世界の技術史を動かす存在になるとは、
当時の誰も想像していなかっただろう。
そのソニーから1979年に生まれたのが、
世界の音楽文化を根底から変えた ウォークマン だ。
きっかけは盛田昭夫氏の個人的な不満。
「録音機能はいらない。
とにかく軽くして、外で音楽を聴きたい。」
技術者は反対した。
市場調査は「需要ゼロ」。
誰もが「売れない」と言った。
しかし、試作機を聴いた井深大氏が言う。
「これは若者がみんな持ち歩くようになる。」
この直感がすべてを変えた。
ウォークマンは
“音楽を共有するもの”から“音楽は自分の世界”へ
という文化の大転換を起こし、
アメリカでも日本でも若者のライフスタイルを塗り替えた。
時代は流れ、カセットもウォークマンも姿を消した。
しかしアナログ回帰の波とともに、
ウォークマンは再び若者の手に戻りつつある。
だが問題がある。
ウォークマンは 修理が極めて難しい。
部品は絶滅、構造は超精密、分解は地獄。
そんな中で、
“最後の砦”のように立ち続けているのが
今井電子サービスの今井和美さん だ。
40年以上ウォークマンを直し続け、
世界中から修理依頼が届く伝説の職人。
壊れたウォークマンを前にしても、
彼はいつも明るい。
「直ったねぇー!」
「ガハハハ!」
あの笑い声には、
機械への愛情と、直せる人間の余裕 が詰まっている。
部品がなければ作る。
ギアが割れていれば再生する。
音の調整まで“本来の音”に戻す。
ウォークマンという文化を、
技術と笑顔で未来へ繋ぐ人 だ。
東京通信工業が生まれた日。
ウォークマンが世界を変えた日々。
そして今井さんがその魂を守る現在。
この3つは一本の線でつながっている。
ソニーの歴史は、
“機械の物語”ではなく、
人の情熱がつないできた物語 なのだ。
今は家電は壊れたら買い替えるのが普通の時代。
メーカーの部品ストックもせいぜい10年ほど。
そんな中、今井さんの元に持ち込まれる家電には、
必ず“理由”がある。
機械ではなく“人生の一部”としての家電。
その気持ちに寄り添い、
時にはジャンク品から部品を移植してでも直してしまう今井さんの手腕は、
まさに圧巻だ。
そしてその姿は、
ソニーが生まれた1946年のあの日と同じく、
技術を信じ、人を信じる力 に満ちている。

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