昔、私は芝居をやっていた。
「踊るさんま御殿」に再現VTRに出させてもらった時の話をする。
台本にはまさかのキスシーンが書いてあった。
内容はブスの彼女(失礼な)が公衆の面前で彼氏にキスをせがむというシーンだ。
当時28歳の私はファーストキスもまだだった奥手である(今も)。
キスか・・・。どうしよう、抵抗あるなぁ。
でも、撮影でキスシーンを演じられるなんて、女優のようだと思った。
「そう、私は女優。キスの一つや二つなんかで、躊躇なんてしていられない!!
せっかくいただいたお仕事なんだから」と意気込んでいた。
撮影当日。
「初めて、セリフをもらって緊張しているのに、その上、キスシーンか…。ちゃんと出来るか心配だな。相手役の人はどんな人なんだろ。まさか、ブサイクじゃないだろうな。
せっかくだから、イケメンがいいな」と考えていたら、相手役が現れた。
そこそこ悪くないイケメンの部類に入る人だった(失礼!!)
相手役は同じ劇団ひまわりの人だった。
結婚したばかりのほやほやだそうだ。だから、奥さんに悪いと思っているらしい。
「じゃ、私と何となく境遇は同じか(いや、全然ちがう!!)
お互い様だなと思った。」
いざ撮影が始まった。私にカメラが回っているのを見て、高揚感が沸いた。
「カメラが私を写している。何て気持ちがいいんだろうと思った。
さあ、いよいよキスシーンだ」
私は相手役にキスをせがむ演技をする。そして、ブチューッと唇を突き出していく。
相手の顔が近づいてくるのを感じる。カメラも更に近づいてきた。
ムニュッと唇に何か柔らかいものが触れた。
キスッてこんなものかとファーストキスがあっけなく終わってしまった。
そして、スタッフがもう一度、キスシーンお願いしますと言ってきた。
「もう一度(怒り)、私の唇はそんなに安くないよ!!」
と思いながら、ブチューッと二回目をした。
撮影が終わって、挨拶をしてからトイレに向い、10回ほどうがいをした私。
相手役もうがいをしているのだろうかと思いながら帰って行った。
by nezuy

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