皆さんは、「台湾」という響きにどのような温もりを思い浮かべるでしょうか。 日本からほんの少し海を渡ったところにある、どこか懐かしく、そして私たちを優しく迎えてくれる島国。歴史や身近な食を通じて「日本と似ている」と感じる一方で、深く知れば知るほど、そこには独自の誇りと、心揺さぶる美しい日常が広がっています。
今回は、私たちが普段何気なく見過ごしてしまいがちな「文化の重なり」や「人々の温かな営み」を通して、心の視野をそっと広げる旅へご案内します。

国のアイデンティティを映し出す「国花」と「国鳥」には、その土地の人々が大切にしてきた哲学や優しさが息づいています。
・国花・梅花(メイホア)に込められた祈り 台湾の国花である「梅」は、日本でも古くから愛されてきた花です。なぜこの花が特別な存在なのか。それは、厳しい寒さの中でも誰よりも先陣を切って、気高く咲き誇るからです。「忍耐・気高さ・不屈」の象徴として東アジアで尊ばれてきた梅は、台湾においてさらに深い意味を持ちます。五枚の花弁は、「長寿・富・健康・徳・天寿」という“五福”の願いそのもの。逆境に負けず、ひたむきに明日を生きようとする人々の心に、この梅の花はそっと寄り添い続けています。
・愛すべき国鳥・台湾キジと、不器用なほどの優しさ 台湾の国鳥は、この高山にしか生きられない固有種「台湾キジ(帝雉)」です。その凛とした姿と圧倒的な希少性は、まさに「台湾らしさ」の象徴。一方、日本の国鳥であるキジの選ばれた理由が「美味しいから」という食いしん坊なものなのも、なんだかクスリと笑えて、人間らしい愛おしさを感じさせてくれますね。
台湾を訪れると、街の空気のそこかしこに「人を大切にする優しさ」が満ちていることに気づきます。
その一つが、「冷たいものは控え、体を労わる」という東洋医学に根ざした食の知恵です。現代ではタピオカミルクティーやマンゴーかき氷といった冷たいスイーツも愛されていますが、根底にあるのは「温かいものでお腹と心を整え、体を大切にする」という思いやり。胃腸が疲れているとき、季節の変わり目、そして大切な人の体調を気遣うとき、飲食店ですら「お湯や氷なしのお水」を出してくれる細やかな配慮には、相手を思いやる温もりが溢れています。
また、台湾の家庭料理には、派手さはないものの、心からホッとする優しさがあります。 日本でいう「そぼろ」のような温かみを持つルーローハン。醤油、米酒、ごま油という「三つの杯」の知恵で鶏肉を包み込み、生姜やバジルの香りをまとわせた家庭料理「三杯鶏(サンベイジー)」。そして、日本のお味噌汁のように、どんな食卓にも湯気とともに寄り添う「湯(スープ)」の存在。 特別な贅沢ではなく、日々の暮らしの中で家族の健康を静かに支え続けるスープやおかゆの温かさは、食べる人の心までじんわりと解きほぐしてくれます。
日本と台湾の時差は、わずか1時間。日本が少しだけ時間を先に行っているその隣で、台湾の人々はどのような今日を紡いでいるのでしょうか。
朝の始まりは、活気に満ちています。 学生も社会人も、通学や出勤の前に「朝食店」へと足を運びます。「豆漿(ドウジャン)」という温かな豆乳の香りが立ち込める中、作りたてのサンドイッチを買い求める人々の姿には、これから始まる一日への小さな期待感が満ちています。
昼下がり、社会人たちが迎える「15時のドリンクタイム」は、ただ水分を補給するためだけの時間ではありません。タピオカミルクティーや香ばしいお茶を手に、張り詰めた緊張をふっと緩め、自分自身を取り戻すための大切なひとときです。
そして、夕暮れから夜にかけての街。放課後の学生たちが鶏排(ジーパイ)を頬張りながら笑い合う青春のひとコマや、17時を過ぎると光を灯し始める「夜市」の活気。金魚すくいではなく、どこか泥臭くも愛おしいペットショップの賑わいや、B級グルメの香ばしい匂いの中を、人々が肩を寄せ合って歩く夜市――。そこには、誰かと分かち合う日常の幸福がぎゅっと詰まっています。
近いようで遠く、遠いようで近い島国・台湾。 その文化の裏側をそっと覗いてみると、そこには「自然を敬い、体を労わり、今日を懸命に生きる人々のかけがえのない営み」がありました。
「いつか、行ってみたい」 その胸の高鳴りや、まだ見ぬ世界に心を馳せる小さなワクワク感は、止まりかけていた私たちの背中をそっと押し、日々の暮らしに鮮やかな彩りを与えてくれます。 ほんの少しの勇気を持って、新しい扉を開けてみる。そんな温かな一歩を、大切にしていきたいですね。
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