昭和レトロな家庭用ゲーム機や世界的キャラクターで有名な京都のグローバル企業「任天堂」。実は元々、花札の製造・販売会社として創業したことをご存じでしょうか?
今や花札といえば、スマートフォンアプリやテーブルゲームとして手軽に遊べるイメージが定着しています。しかし、かつての花札は賭博(賭け事)の道具として厳しく禁止されていた暗い歴史がありました。解禁されてからも「教育に悪影響を与える」「子供には遊ばせない」と敬遠する親が多かった時代もあります。
では、なぜアウトローなイメージの強かった花札が、現代において誰もが楽しめる伝統的な娯楽として一般に流通するようになったのでしょうか? 今回は、知られざる花札の波乱万丈な歴史と、最もメジャーな遊び方である「こいこい」の基本ルールをご紹介します!

花札は別名「花カルタ」とも呼ばれます。そのルーツは室町時代末期、ポルトガルからカステラと共に日本へ伝来した「カルタ」(現在のトランプのようなカードゲーム)にあります。当時の現存物としては「天正かるた」が非常に有名です。
このカルタが庶民の間で空前の大流行となり、やがて賭け事に広く使われるようになると、江戸幕府は一斉摘発を敢行。カルタの製造や販売は公然と行うことができなくなりました。しかし、ここで知恵を絞ったのが当時の職人や庶民たちです。
当時、「百人一首」は和歌を学ぶ教育的な価値があるとして摘発を免れていました。そこで職人たちは、カードの絵柄に古歌や四季折々の風物を隠し入れ、図案化することで「これは教育用のカードである」と主張し、法の目をかいくぐる工夫をしたのです。これが現在の花札の原型となりました。
・江戸時代(文化4年頃): 山形をはじめとする幕府領内で「花札を使用した賭け事は厳禁」とする御触書(現在の条例)が次々と布告されました。
・明治14年〜15年: 明治政府のもとでも長らく販売が禁止されていましたが、明治15年の新法典施行により禁止の記述が消失。背景にはトランプ等の輸出を狙うイギリスからの外圧があったとも囁かれています。初代総理大臣・伊藤博文の妻である梅子夫人も大の花札好きで、屋敷に客人を招いては興じていたという逸話が残っています。
・明治20〜30年代: 明治23年の書物には「婦女子の玩具から賭博の道具へ変貌した」と記録され、明治25年には司法官が花札賭博で逮捕される事件も発生。明治35年には内職としてのカルタ製造に対し「骨牌税(こっぱいぜい)」が創設されるほど広く流通しました。
・大正〜昭和時代: 賭博としての利用は減少し、任天堂などの製造普及もあって純粋な「家庭用遊具」へ移行。しかし昭和の高度経済成長期でも賭け事のイメージは強く、修学旅行で「トランプは許可するが花札は禁止」とする学校が多く存在しました。今でもその名残を覚えている方は多いかもしれません。
花札は日本の美しい四季(12か月)を植物や風物で表現しています。1か月あたり4枚の札があり、合計48枚で一組となります。
・1月: 松(まつ) / 2月: 梅(うめ) / 3月: 桜(さくら)
・4月: 藤(ふじ) / 5月: 菖蒲(あやめ) / 6月: 牡丹(ぼたん)
・7月: 萩(はぎ) / 8月: 芒(すすき) / 9月: 菊(きく)
・10月: 紅葉(もみじ) / 11月: 柳(やなぎ) / 12月: 桐(きり)
これらの札は、点数や役割によって「五光(ごこう)」「タネ」「短冊(たんざく)」「カス」の4つのグループに分かれています。これらを組み合わせて決まった「役」を作り、得点を競い合います。
花札の中で最もポピュラーな2人対戦型ゲーム「こいこい」の遊び方をご紹介します。
【準備手順】
【基本の進め方】
・手札から場札と同じ月(同じ植物)の札があれば重ねて取り、自分の獲得札とします(同じ月がなければ手札から1枚場に捨てます)。
・次に山札から1枚めくり、場に同じ月の札があればそれも獲得できます。
・これを交互に行い、獲得した札で「役」が完成した時点で上がることができます。
★ここが醍醐味!「こいこい」の決断
役ができたとき、そのまま勝負を終えて得点を得るか、「こいこい!」と宣言してゲームを継続し、さらに高い役を狙うかを選べます。ただし、継続中に相手に先にとられて上がられてしまうと自分の得点は0になるため、相手の手札と場の状況を読む熱い心理戦が生まれます。
【代表的な役の例】
・五光(ごこう): 光札5枚をすべて揃える最高得点役(1月鶴、3月桜、8月月、11月小野道風、12月桐に鳳凰)。
・猪鹿蝶(いのしかちょう): 6月の蝶、7月の猪、10月の鹿のタネ札3枚を揃える有名役。
・花見酒・月見酒: 3月の桜に幕、または8月の月に芒と、9月の菊に盃の札を組み合わせる風流な役。
現代では「点」で計算するのが主流ですが、江戸・明治の賭博の名残として「文(もん)」という通貨単位で数えることもあります。絵柄を見るだけでも日本の伝統美を感じられる花札。ぜひ一度手にとってみてはいかがでしょうか?
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