「あ、これ私には向いてないわ。」
新しい仕事をやってみた。
思ったより時間がかかった。
ミスをした。
周りの人は自分より上手にできている。
そんなとき、私たちは意外と簡単に、
「自分には向いていない」
と判定してしまうことがあります。
仕事だけではありません。
勉強、運動、料理、人付き合い、新しい趣味。
一度やってみてうまくいかないと、「これは苦手」「自分には向いていない」と思ってしまう。
でも、ちょっと待ってください。
それって本当に「向いていない」のでしょうか。
もしかすると、
単純に、まだ慣れていないだけかもしれません。
新しい仕事を始めたばかりのころを思い出してみてください。
知らない言葉がたくさん出てくる。
先輩から説明を受けても、一度では覚えられない。
メモを見ながら作業しても時間がかかる。
ようやくできたと思ったら、間違えている。
そして横を見ると、先輩は同じ仕事をものすごいスピードで終わらせている。
「私、この仕事向いてないのかも……」
そう思ってしまう気持ちも分かります。
でも、その先輩。
もしかしたら、その仕事を5年やっているかもしれません。
一方、自分は始めて3日目。
それで同じようにできたら、むしろすごすぎます(笑)。
パソコン作業だって、最初からショートカットキーを全部知っている人はいません。
電話対応だって、初めは緊張して言葉が出てこないことがあります。
接客だって、最初から自然に話せるとは限りません。
初めてやったことがうまくできない。
考えてみれば、とても自然なことなんですよね。
ここで一度、言葉を分けて考えてみたいと思います。
「向いてない」
と、
「まだできない」
です。
似ているようですが、この二つは結構違います。
「向いてない」と決めてしまうと、そこで話が終わってしまいやすい。
でも「まだできない」なら、
「何回か練習したらどうだろう?」
「誰かに教えてもらったら?」
「違うやり方ならできるかも?」
と、次の選択肢が残ります。
だから私は、新しいことがうまくできなかったときに、すぐ「向いてない」と決めるのは少しもったいないと思っています。
今ある材料だけでは、まだ判断できないだけかもしれないからです。
では、自分に向いている仕事かどうか、どうやって判断すればいいのでしょうか。
私はまず、
やってみる。 教えてもらう。 何度か繰り返してみる。 やり方を変えてみる。
これくらいは試してみてもいいと思います。
例えば、説明を聞いただけでは覚えられない。
だったら、メモを取ってみる。
文章だけでは分かりにくい。
だったら、実際に一度やって見せてもらう。
長時間集中するのが難しい。
だったら、作業を細かく区切ってみる。
分からないところで止まってしまう。
だったら、早めに質問してみる。
一つの方法でうまくいかなかったからといって、その仕事そのものが向いていないとは限りません。
自分に合う「やり方」が、まだ見つかっていない可能性もあります。
以前の記事でも書きましたが、人は「できるようになったこと」を意外と忘れてしまいます。
最初は何度も質問していた仕事。
一つ終わらせるだけで疲れていた作業。
毎回メモを確認しないとできなかったこと。
それが数か月後には、
「これくらい普通ですよ」
と言いながらやっていたりします。
でも、それは最初からできたわけではありません。
質問した。
失敗した。
教えてもらった。
もう一度やった。
その積み重ねで、少しずつ「できる」に変わっていったんです。
もし最初の一回で、
「向いてないからやめよう」
と決めていたら、その「できる」には出会えなかったかもしれません。
ここまで書くと、
「諦めずに努力すれば、何でもできるようになる!」
という話に聞こえるかもしれません。
でも、私はそうは思いません。
何度やっても強い負担を感じる仕事もあります。
練習してもなかなか難しい作業もあります。
どうしても苦手なことだってあります。
そして、それは悪いことではありません。
全員が全部できる必要なんてないですよね。
細かい作業が得意な人もいれば、人と話すことが得意な人もいる。
一つのことに集中するのが得意な人もいれば、いくつもの仕事を切り替えながら進めるのが得意な人もいます。
「これは自分には合わないな」
と気づくことも、立派な自己理解です。
大切なのは、
一度うまくいかなかったことだけを理由に、自分の可能性まで決めてしまわないこと。
だと思います。
仕事では、「できないことをできるようにする」ことに目が向きがちです。
もちろん、それも成長です。
でも、自分の得意な方法を知ることも同じくらい大切です。
例えば、
口頭で説明されると混乱するけれど、文章なら理解しやすい。
一人で考え続けるより、途中で確認したほうがうまくいく。
スピードは速くないけれど、丁寧に確認する仕事は得意。
人前で話すのは苦手だけれど、一対一なら話しやすい。
こういうことが分かってくると、
「自分は何もできない」
ではなく、
「自分はこうすれば力を発揮しやすい」
と考えられるようになります。
就職や仕事を考えるときにも、この違いはとても大きいと思います。
新しいことに挑戦して失敗したとき。
周りより時間がかかったとき。
思ったようにできなかったとき。
「向いてない!」
と言いたくなったら、その前に一言だけ付け加えてみてください。
「まだ、分からない」
これくらいでいいと思います。
無理に、
「絶対できる!」
と思い込む必要もありません。
まだ分からないから、もう一回やってみる。
まだ分からないから、誰かに聞いてみる。
まだ分からないから、違う方法を試してみる。
その結果、
「あ、意外とできるかも」
となるかもしれません。
反対に、
「やっぱりこれは苦手だな」
と分かるかもしれません。
どちらでもいいんです。
どちらも、自分のことを一つ知れたという意味では前進です。
「向いてない」と決めること自体が悪いわけではありません。
苦手なことを知る。
得意なことを知る。
自分が力を発揮しやすい環境を知る。
どれも働いていくうえで大切なことです。
ただ、一度失敗しただけ。
一回うまくできなかっただけ。
それだけで「自分には向いていない」と決めるには、まだ材料が少ないかもしれません。
昨日できなかったことが、明日は少しできるかもしれない。
何度かやっているうちに、いつの間にか普通にできるようになるかもしれない。
やり方を変えたら、自分の意外な得意に気づくかもしれない。
それでも合わなかったら、そのときは別の方法や道を探せばいい。
「向いてない」ではなく、「まだ分からない」。
自分の可能性に結論を出すのは、もう少し後でもいいのではないでしょうか。
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