「あの人は、もうこんなことができている」
「自分より後から始めたのに、どんどん上達している」
「それに比べて、自分は……」
仕事でも、勉強でも、趣味でも、私たちはつい自分と誰かを比べてしまいます。
特に今は、SNSを開けば誰かの「うまくいっている瞬間」がたくさん目に入ってきます。
新しい仕事が決まった人。
資格を取得した人。
毎日楽しそうに働いている人。
そんな姿を見ていると、自分だけが同じ場所に立ち止まっているような気持ちになることもあるかもしれません。
でも、そんなときこそ思い出してほしいことがあります。
比べるなら、昨日の自分くらいがちょうどいい。
人と自分を比べること自体が、悪いわけではありません。
「あんなふうになりたい」
「あの人みたいにできるようになりたい」
誰かの姿が目標になって、頑張るきっかけになることもあります。
ただ、比較には少し困ったところがあります。
それは、相手と自分では「スタート地点」が違うことです。
得意なことも違えば、苦手なことも違う。
これまで経験してきたことも違うし、生活環境や体調だって違います。
100メートル先からスタートした人と、スタートラインに立ったばかりの人を比べても、本当の意味でどちらが頑張っているのかはわかりません。
それなのに、人と比べていると、
「自分はまだこれしかできない」
と、自分に足りないものばかり探してしまうことがあります。
では、比べる相手を少し変えてみましょう。
誰かではなく、昨日の自分です。
昨日より、少し早く起きられた。
昨日より、5分長く作業に集中できた。
今までわからないまま進めていたけれど、今日は「わかりません」と質問できた。
苦手だった作業で、今日は一つだけミスが減った。
一つひとつを見ると、とても小さな変化かもしれません。
履歴書に書けるようなことでもなければ、誰かに自慢するようなことでもないでしょう。
それでも、昨日できなかったことが今日できたのなら、それはちゃんとした「成長」です。
成長という言葉を聞くと、私たちはつい大きな変化を想像します。
資格を取る。
就職する。
新しい仕事を任される。
収入が増える。
もちろん、それらも成長です。
でも、本当の成長はもっと静かに起きているのかもしれません。
就労継続支援B型などの就労支援の現場でも、成長の形は一人ひとり違います。
たとえば、作業そのものは昨日と同じだったとしても、
「疲れてきたので少し休みたいです」
と自分から伝えられた。
これは、自分の状態を理解して相手に伝えるという大切な力です。
ミスをしてしまったけれど、隠さず報告できた。
これも、働くうえでは大切な力でしょう。
体調を崩してしばらく通えなかった人が、久しぶりに通所できた。
これだって、大きな一歩です。
福祉や就労支援というと、「できないことをできるようにする場所」というイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし、それだけではありません。
自分には何が得意なのか。
どんなときに疲れやすいのか。
困ったとき、どうすれば助けを求められるのか。
どんな環境なら力を発揮しやすいのか。
就労継続支援B型でさまざまな作業や人との関わりを経験することは、そんな「自分の取扱説明書」を少しずつ作っていく時間でもあります。
とはいえ、毎日成長できるわけではありません。
昨日はできたのに、今日はできなかった。
先週は調子がよかったのに、今週はなぜか集中できない。
そんな日もあります。
人間の調子は、右肩上がりのグラフのようにはいきません。
進んだと思ったら戻ったり、しばらく同じ場所にいたり、ときには立ち止まったりします。
だから、「昨日の自分と比べよう」という言葉も、
昨日より必ず成長しなければならない
という意味ではありません。
今日は昨日よりできなかった。
それなら、
「今日はちょっと疲れているのかもしれない」
と気づけたら、それで十分な日もあります。
大切なのは、毎日昨日の自分に勝ち続けることではなく、自分の変化を自分で見つけられることなのだと思います。
毎日見ている自分だからこそ、自分自身の変化には意外と気づきにくいものです。
だから、たまには少し前の自分を思い出してみてください。
1か月前の自分はどうだったでしょうか。
半年前は?
1年前は?
「あのころは、この作業にすごく時間がかかっていたな」
「最初は緊張して、ほとんど話せなかったな」
「以前は週に1回通うだけでも大変だったな」
そうやって振り返ってみると、普段は気づかなかった変化が見つかることがあります。
就労支援においても、支援する側がその小さな変化を見つけ、本人と一緒に振り返ることはとても大切です。
「前よりできていますよ」
だけではなく、
「前は30分くらいで疲れていたけれど、最近は1時間くらい集中できる日が増えましたね」
そんなふうに具体的に振り返ることで、自分自身の成長にも気づきやすくなります。
誰かより早く進まなくてもいい。
誰かと同じことができなくてもいい。
就職までの道のりも、働き方も、成長するスピードも、人によって違います。
大切なのは、「みんなと同じ場所にいるか」ではなく、自分がどんな道を歩いてきたのかを知ること。
昨日できなかったことが、今日は少しできた。
今日はできなかったけれど、「また明日やってみよう」と思えた。
それくらいの一歩でいいのだと思います。
周りを見て焦りそうになったら、ほんの少しだけ後ろを振り返ってみてください。
そこにはきっと、今の自分になるまでに歩いてきた道があります。
比べるなら、昨日の自分くらいがちょうどいい。
今日も、自分のペースで一歩ずつ。
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