こんにちは、キャリカク一宮駅前の利用者「ファーストネームが K」 です。

その美貌のためにワシに変身したゼウスにさらわれたトロイアの王子ガニュメーデース、それがみずがめ座です。ちなみに、ゼウスの化身のワシはわし座です(「さそり座」参照)。
12星座をキーワードにギリシャ神話などを語ってみる新連載です。
概要は次の通りです。
♈おひつじ座:プリクソスの旅、アルゴー船物語、南極老人星
♉おうし座:エウローペーの旅、イーオーの彷徨、木星の衛星
♊ふたご座:四つ子、ディオスクーロイ(ゼウスの子たち)、オオクニヌシノミコト
♋かに座:双子、英雄の試練、婚姻神話
♌しし座:ネメアーの獅子、春の大曲線と大三角、熊にされたカリストー
♍おとめ座:地上の秩序、冥界の食べ物、見てはいけない
♎てんびん座:てんびんはごまかせない、天上の秩序、地道な正義
♏さそり座:星座が先か神話が先か、サソリの火、夏の大三角
♐いて座:不死のケンタウロス、アキレウスの養育、ヘーラクレースの過失、プロメーテウスの身代わり
♑やぎ座:牧神パーン、ペルセウスとアンドロメダー、スサノオノミコトとクシナダヒメ
♒みずがめ座:神々に愛された一族、トロース王の子ガニュメーデース、プリアモス王の弟ティートーノス
♓うお座:ヴィーナスとキューピッド、神々に愛された一族、ローマの建国神話
ギリシャ神話によく登場する小アジアの国トロイアは、アトラースとプレイオネーの7人の娘のひとりエーレクトラーと最高神ゼウスとのあいだに生まれたダルダノスを始祖とします(ちなみに、この7人の娘たちはプレアデス星団すなわちスバルです)。
トロイアの一族は、プリアモス王の代にギリシャ軍に滅ぼされましたが、神々に愛された一族としても語り継がれています。「てんびん座」でお話ししたように、最高神ゼウスもトロイア側に肩入れしていたくらいです。滅ぼされたトロイアの一族がなぜ神々に愛される神話になったのかについては、次回「うお座」でも考察するつもりです。
ダルダノスの孫のトロース(「トロイア」の語源)には、3人の息子、すなわちイーロス、アッサラコス、そしてガニュメーデースがいます。ガニュメーデースは、冒頭で述べたように、その美貌でゼウスに愛され、さらわれます。いわゆる神隠しです。トロイア最後の王プリアモスはイーロスの孫で、その弟ティートーノスは曙の女神エーオースに愛され、やはり、神隠しの伝説があります。アッサラコスの孫アンキーセースは、愛の女神アプロディーテーにみそめられ、ふたりのあいだに、最も神々に愛された英雄アイネイアースが生まれます。
アンキーセースとアイネイアースについては次回「うお座」で取り上げますが、アイネイアースは、ギリシャ軍との戦いにおいても神々に守られて生きのびることになります。
古代ギリシャの詩歌集『ホメーロス賛歌』の「アプロディーテーへの賛歌」では、トロイア王家が神々から受けた愛の一例として、ガニュメーデースの伝説が語られます。
最高神ゼウスは絶世の美少年ガニュメーデースを、神々の宴席でお酌をする係にするために、さらってしまいました。後世の伝説では、「さそり座」で触れたように、ゼウスが鷲に変身してさらったとも言われるようになります。
しかし、父親のトロースは、息子が神隠しにあって悲嘆にくれてしまいました。そこで、ゼウスはその償いとして、素晴らしい馬を贈りました。この駿馬がたびたびギリシャ神話のなかで言及されるのも、トロイア王家の血筋の良さを強調するためだと思われます。
「おうし座」あるいは「しし座」でお話ししたように、ゼウスにさらわれたりみそめられたりした人たちは、現代では木星の衛星の名前にもなっています。ガニュメーデースは衛星ガニメデの語源です。
曙の女神エーオースは、プリアモス王の弟ティートーノスに恋して、さらってしまいます。ふたりの子供のメムノーンは英雄で、トロイア戦争に参加し手柄も立てますが、残念ながらアキレウスに倒されてしまいます。
ところで『ホメーロス賛歌』の抄訳『四つのギリシャ神話』(岩波文庫)の訳者解説によると、「エーオースは、ティートーノスのそば、床より立ち上がった」という表現は、「朝が来た」ことを表す詩的な定型句だそうです。古代ギリシャでは、エーオースとティートーノスの物語が親しまれていたようです。
ギリシャ神話では、女神が人間の男性と結婚する例はめずらしいです。「いて座」の回で海の女神テティスとぺーレウスが結婚してアキレウスが生まれるお話を紹介しましたが、この場合は、人間のほうから女神に言い寄りました。トロイアの王子たちの場合はそうではなく、女神のほうからのアプローチです。前述のアンキーセースも女神アプロディーテーに誘われます。このことからも、トロイアの一族にまつわる伝説の特異性が際立っているように、私には思えます。それとも単に、トロイア王家がイケメンぞろいだったみたいな言い伝えでもあったのかな?
ギリシャ神話は基本的に次の本を参考にしています。
アポロドーロス『ギリシア神話』(岩波書店)
この回のアプロディーテーのお話は次の『ホメーロス賛歌』の抄訳本も参考にしました。
逸見喜一郎・片山英男訳『四つのギリシャ神話』(岩波書店)
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