こんにちは、キャリカク一宮駅前の利用者「ファーストネームが K」 です。

豊穣の女神デーメーテールの娘のコレー、またの名を冥界の女王ペルセポネー、それがおとめ座です。
おとめ座は星の女神アストライアー、あるいは、正義の女神ディケーとも言われますが、それについては「てんびん座」の回でお話しするつもりです。
12星座をキーワードにギリシャ神話などを語ってみる新連載です。
概要は次の通りです。
♈おひつじ座:プリクソスの旅、アルゴー船物語、南極老人星
♉おうし座:エウローペーの旅、イーオーの彷徨、木星の衛星
♊ふたご座:四つ子、ディオスクーロイ(ゼウスの子たち)、オオクニヌシノミコト
♋かに座:双子、英雄の試練、婚姻神話
♌しし座:ネメアーの獅子、春の大曲線と大三角、熊にされたカリストー
♍おとめ座:地上の秩序、冥界の食べ物、見てはいけない
♎てんびん座:てんびんはごまかせない、天上の秩序、地道な正義
♏さそり座:星座が先か神話が先か、サソリの火、夏の大三角
♐いて座:不死のケンタウロス、アキレウスの養育、ヘーラクレースの過失、プロメーテウスの身代わり
♑やぎ座:牧神パーン、ペルセウスとアンドロメダー、スサノオノミコトとクシナダヒメ
♒みずがめ座:神々に愛された一族、トロース王の子ガニュメーデース、プリアモス王の弟ティートーノス
♓うお座:ヴィーナスとキューピッド、神々に愛された一族、ローマの建国神話
農耕や牧畜を営むには、季節の移り変わりを正確に知ることが重要です。古代ギリシャにおける豊穣の女神デーメーテールも、その娘ペルセポネーの伝説によって、季節の移り変わりの規則正しさと結びつけられています。ペルセポネーは冥界の女王としても知られていて、その名前を口にするのも恐れ多いのでコレー(「乙女」という意味)と呼ばれることもあります。(ちなみに「おうし座」でお話したように、デーメーテールは、ゼウスに牝牛にされたイーオーやエジプトの女神イーシスと同一視され、古代ギリシャで信仰を集めていました。)
冥界の王プルートーンはコレー(ペルセポネー)に恋して、ゼウスの助力を得て彼女を冥界に連れ去ってしまいます。しかし、それを知って怒ったデーメーテールが姿をくらますと、全世界が不作になってしまいます。ゼウスは、仕方なく、プルートーンにコレーを地上に帰らすように命じますが、プルートーンはコレーにザクロの粒(たぶん冥界の食べ物の象徴)を食べさせ、それにより、コレーは母のそばに長く居られなくなってしまいます。
つまり、コレーは冬のあいだは地下で暮らさなければならず、春になると地上で暮らせることになります。これは、冬のあいだ不毛でも春になれば植物が生えてくるという、生命の生・死・再生や季節の移り変わりの規則正しさを教える説話になっています。
それにしても、なぜザクロを食べると冥界で暮らさなければならないのでしょうか。それはたぶん、死者と同じ食べ物を食べると地上の生の世界に戻れなくなるという、世界各地の冥界説話でよく見られるモチーフから来ていると考えられています。だから、コレー(ペルセポネー)が食べたのは単なるザクロではなく、冥界産ザクロだったのでしょう。
古事記や日本書紀にもあるお話です。すなわち、イザナギノミコトは、亡き妻イザナミノミコトを呼び戻すために黄泉の国(冥界)へ行きましたが、イザナミはすでに黄泉の国の食べ物を食べたために戻れなくなっていました。
日本の黄泉の国のお話は続きがあって、イザナミは、地上に戻れるように黄泉の国の神と交渉するあいだ彼女の姿を見てはならない、とイザナギに言いますが、イザナギはその約束を破ってしまって、結局イザナミが地上に戻ることはできませんでした。
この鶴の恩返しみたいな話は、ギリシャ神話にもあります。
ムーサイ(芸術の女神)のひとりカリオペーの子で、歌によって木や石を動かしたという伝説上の吟唱詩人オルペウスは、亡き妻エウリュディケーを連れ戻そうと冥界に降りてプルートーンを説得しましたが、プルートーンがオルペウスが自分の家に着くまで振り返ってはならないと言ったにもかかわらず、振り返って妻を眺めたため、エウリュディケーは再び冥界に帰ってしまいました。
ちなみに、オルペウスの竪琴がこと座で、こと座の青白い0等星ベガは織女星つまり織り姫様です。

ギリシャ神話は基本的に次の本を参考にしています。
アポロドーロス『ギリシア神話』(岩波書店)
この回のデーメーテールのお話は次の『ホメーロス賛歌』の抄訳本も参考にしました。
逸見喜一郎・片山英男訳『四つのギリシャ神話』(岩波書店)
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