サグラダ・ファミリアの「イエス・キリストの塔」完成のニュースをきっかけに、未完の美と完璧な秩序、そしてそこに宿る建築の生命力について考えを巡らせた。
建築や芸術において「未完」は決して不完全な欠陥ではない。鑑賞者の想像力が入り込む余白を残し、作り手の情熱や時間の経過という「物語」をそのまま刻み込む。ミケランジェロの彫刻やミロのヴィーナスのごとき儚さと味わいがある。日本の茶人・古田織部もまた、完璧な対称性を崩し、あえて茶碗を歪ませた「ひょうげもの」の破調に人間味と愛おしさを見出した。
しかし、その一方で隙のない「完璧な美」の快感も確実に存在する。自然界のオウムガイの巻き貝やひまわりの種に見られるフィボナッチ数列。隣り合う数字の比率を極限まで計算していくと、数学的に「黄金比(約 1:1.618)」へと収束することが数式で証明されている。この絶対的な秩序と調和は、人間の脳にストレスを与えず、一目で「美しい」と感じさせる強さを持つ。サグラダ・ファミリアもまた、未完という動的なプロセスの中に、ガウディが自然から抽出した黄金比や構造力学という「完璧な数学的秩序」を内包しているからこそ、見る者を圧倒するのだ。
そんな思考を遊ばせるうち、天国のサロンで巨匠たちが顔を突き合わせる妄想が膨らんだ。
「直線は人間に属し、曲線は神に属する」と石の森を立ち上げたアントニ・ガウディ。
「芸術は爆発だ」「未完成であれ」と呪術的な生命力を叩きつけた岡本太郎。
「建築は完成して終わる機械ではなく新陳代謝する生命体だ」と共生を説いた黒川紀章。
整然とした近代都市の箱型建築を嫌った三人が、東京都港区三田の再開発地区で岡啓ウ氏がたった一人、セルフビルドで造り続ける「蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)」を見下ろしたらどう言うだろうか。
図面や効率、巨大資本の論理に魂を売らず、己の手でコンクリートを練り、身体のスケールで立ち上げられる泥臭い情念の塊。ガウディは「これこそ命を削る真の建築」と頷き、太郎は「ベラボーな情念の爆発だ」と歓喜し、黒川は「都市のシステムに対する見事な共生と新陳代謝」と脱帽するに違いない。
不完全な人間の手作業と、完璧な自然の法則。効率がすべてを覆い尽くす現代だからこそ、未完の余白と圧倒的な生命力を宿した建築に、私たちはどうしようもなく惹きつけられるのだ。
↓蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)(ハウルの動く城)のようないびつさが魅力です(笑)

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