8月5日は、『金田一少年の事件簿』の主人公・金田一一(はじめ)の誕生日!
彼が作中で「じっちゃんの名にかけて!」と敬愛してやまない伝説の名探偵こそ、横溝正史作品のヒーロー金田一耕助です。
『獄門島』『八つ墓村』『悪魔が来りて笛を吹く』など、映像化も多い不朽の名作ばかりですが、不気味な子守歌の通りに事件が進む『悪魔の手毬唄』のように、横溝作品といえば「怨念」や「村の古い因習」が絡むドロドロとしたホラー風味が癖になりますよね。
しかし、ミステリーファンの間では昔からこんなツッコミが囁かれています。
「いや、金田一耕助って名探偵か……? 犯罪防御率ゼロ(どころかマイナス)だろ!」
今回は、野球の投手成績なら大炎上間違いなしの金田一耕助の「犯罪防御率」と、お決まりのラストシーンに迫ります!
防御率0%どころか「マイナス」に突入する理由
一般的なサスペンスであれば、探偵が犯人のトリックを見破り、間一髪で次の殺人を阻止するのが王道です。
しかし、じっちゃん(耕助)の場合は違います。
第1の殺人: 金田一が現場に到着した時点ですでに発生している(これは仕方ない)。
第2の殺人: 捜査中、目の前または目と鼻の先で発生。
第3の殺人: 見立て殺人の予告状が出ているにもかかわらず、バッチリその通りに発生。
見事なまでに次の殺人を防げません。
依頼を受けて現場に乗り込んでいるにもかかわらず、彼が滞在することで被害者がネズミ算式に増えていく様は、もはや「防御率ゼロ」を通り越して「マイナス(存在すること自体が被害を拡大させている)」と言われても言い返せないレベルです。
犯人指摘からの「独白&服毒」という究極の放置play
さらに防御率を下げる決定打となっているのが、事件終盤のクライマックスシーンです。
「真犯人はあなたです!」 と犯人を指名。
犯人が開き直り、悲しき過去や複雑な動機を長々と独白し始める。
金田一も警察も、「なるほど……そんな辛い過去が……」 とばかりに温かい目で見守る。
語り終えた犯人が、懐からスッと毒薬を取り出して服用。
「ああっ!しまった!」 と叫ぶものの時すでに遅し、犯人死亡。
「いや、そこは防げよ!!」
読者や視聴者の誰もが心の中で絶叫する瞬間です。
犯人を特定した安心感からか、最後の最後で犯人自身の命をガードしきれず、自決を許してしまう。これによって「事件関係者の死亡者数」がさらに+1されるという、怒涛のフィニッシュが炸裂します。
なぜじっちゃんは「防げない」のか?
ネタとして弄られがちなこの「低防御率」ですが、物語の構造を深く読み解くと、金田一耕助という探偵の真の姿が見えてきます。
1. 彼は「警備員」ではなく「解読者」である
金田一は警察のような強制力を持たず、犯人を捕まえる「正義のヒーロー」として機能していません。彼の本質は、旧家の怨念や歴史の闇に埋もれた「悲劇の真実を解き明かす観察者」です。
2. 犯人の執念が凄絶すぎる
横溝正史作品の犯人たちは、何年も前から人生を賭けて計画を練り上げています。一朝一夕でやってきた探偵が突発的に止められるほど、彼らの怨念は甘くありません。
3. 「自決」も含めて事件の幕引きと考えている?
金田一は、真相をすべて明るみに出すことで死者の無念を晴らします。しかし同時に、悲しい運命に縛られた犯人に対して、法で裁かれる以上の「救い」や「決着」として自決を静かに受け入れてしまっている節すらあります。
まとめ:防げないからこそ愛される名探偵
「犯罪防御率」という観点で見れば、金田一耕助は間違いなくワースト級の成績かもしれません。
しかし、彼が完璧に殺人を未然に防ぐヒーローだったら、あのドロドロとした人間ドラマや、切なくも美しい横溝文学の魅力は半減していたでしょう。
次から金田一作品を見る時は、ぜひ心の中で「よし、今日も順調に防御率が下がっているな」「そこは止めろ!」と温かくツッコミを入れながら楽しんでみてください。
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