第5章 カナリア諸島がスペイン領になった経緯
15世紀の「大航海時代」の幕開けとともに始まった、約1世紀にわたる激しい征服の歴史
大きく分けて、以下の3つの段階を経てスペイン領となりました。
1. 「忘れられた島々」の再発見
古代ローマ時代には知られていたカナリア諸島ですが、中世ヨーロッパでは長く忘れられた存在でした。
14世紀: 地中海の商人や探検家たちが再び島を訪れるようになり、その存在が知れ渡ります。
当初の目的: 領土拡大というよりは、奴隷の確保や、貴重な染料の原料(ランサローテ島に生息する地衣類など)の採取が目的でした。
2. ノルマン人騎士による初期の征服(1402年〜)
最初に組織的な征服に乗り出したのは、フランス・ノルマンディー出身の騎士ジャン・ド・ベタンクールでした。
彼はカスティーリャ王国(現在のスペインの母体)の支援を受け、まず北部の島々(ランサローテ島やフエルテベントゥラ島など)を攻略しました。
この際、彼はカスティーリャ王への忠誠を誓ったため、実質的にスペインの影響下に入ることになります。
3. スペイン王室による直接征服と「グアンチ人」の抵抗
15世紀後半になると、スペイン王室(イサベル1世とフェルナンド2世)が直接軍を送り込み、本格的な征服を開始します。
激しい抵抗: 先住民グアンチ人は、険しい地形(洞窟や断崖)を利用して、石や木で作った武器で果敢に抵抗しました。
アセンテホの惨劇: 特にテネリフェ島では、スペイン軍が大敗する局面もありました。
終焉(1496年): しかし、スペイン軍の鉄製の武器や馬、そして何よりヨーロッパから持ち込まれた病原体に対して、免疫のないグアンチ人は次第に追い詰められていきました。1496年、テネリフェ島が陥落したことで、全島がスペイン領となりました。
なぜスペインは執着したのか?(コロンブスとの関係)
スペインがここまで必死にこの島々を求めたのには、重要な理由がありました。
アメリカ大陸への玄関口: 1492年、クリストファー・コロンブスがアメリカへ向かう際、最後に立ち寄って水と食料を補給したのがカナリア諸島(ラ・ゴメラ島やグラン・カナリア島)でした。
1. 歴史的な背景:なぜ西へ向かったのか?
陸路の封鎖: 当時、東方の香辛料(胡椒、クローブなど)はシルクロードを経由していましたが、1453年にオスマン帝国がコンスタンティノープルを陥落させたことで、地中海の東側ルートがイスラム勢力の支配下に入りました。
高騰する価格: 中間マージンが跳ね上がり、ヨーロッパ諸国は「イスラム勢力を介さずにアジア(インディアス)へ行く直接ルート」を必死に探していました。
ポルトガルの先行: 隣国ポルトガルがアフリカ南端回りの東回り航路をほぼ独占しようとしていたため、スペイン(カスティーリャ王国)は**逆張りの「西回り」**に賭けるしかなかったという事情もあります。
2. カナリア諸島の役割
コロンブスにとって、カナリア諸島は単なる経由地ではなく、戦略上の生命線でした。
貿易風の利用: カナリア諸島付近から西へ吹く「貿易風」に乗ることが、帆船時代の航海において最も効率的でした。
最終補給基地: 1492年の第1回航海でも、彼はカナリア諸島のラ・ゴメラ島などで食料と水を補充し、船の修理(舵の故障など)を行っています。ここを最後に未知の海域へ踏み出したのです。

図 コロンブスの補給
この島々は、大西洋を渡るための**「最高の出発地点」**だったのです。
第6章 オーバーツーリズム
彼らが求めているのは、単に観光資源としての「海がある(Exist)」状態ではなく、島本来の霊性や静寂が「そこに、いる(Presence)」状態だからです。
1. 「島はもう限界だ」という叫び
現在、カナリア諸島(特にテネリフェ島やランサローテ島)では、”Canarias tiene un límite”(カナリアには限界がある) という大規模な住民運動が起きています。 これは、ワーズワースが蒸気機関車に対して抱いた危惧の現代版です。
ワーズワースの懸念: 「無教育な大衆が押し寄せ、自然との深い交わり(参与)が失われる」
カナリアの住民の懸念: 「過剰な観光開発(オーバーツーリズム)によって、自分たちの生活の場(Presence)が、単なる消費財(Exist)に成り下がってしまう」
2. 「ある」景色の消費 vs 「いる」場所の守護
ワーズワースにとって、湖水地方の自然は「神の啓示」が宿る象徴的な場所でした。濱氏の用語を借りれば、彼は自然の中に神の**「参与(Participation)」**を見ていたのです。
カナリア諸島でも、環境活動家たちは島を「単なるリゾート地(ある)」ではなく、**「独自の生態系と文化が息づく人格的な存在(いる)」**として捉えています。
観光客:インスタ映えする景色が「ある」ことを確認しに来る。
反対派:島が島として「いる」ための静寂と持続可能性を守ろうとする。
結び
太陽の下で「充電」を求める欧州の人々のように、カナリア諸島で何が自分の心を開くのかを確かめたいです。
✻˸ꕤ˸⋆。˖✻˸ꕤ˸⋆。˖✻˸ꕤ˸⋆。 … ˖✻˸ꕤ˸⋆。˖✻˸ꕤ˸⋆。˖✻˸ꕤ˸⋆。
キャリカクJR茨木駅前
大阪府茨木市西駅前町5-36 茨木高橋ビル5階
JR茨木駅 西口から徒歩2分
TEL:072-657-7505
CONTACT


