
図1 カナリア諸島の島々 その1

図 2 カナリア諸島の位地 その2
第1章
ラ・パルマ島のクンブレ・ビエハ火山のおける山体崩壊の可能性(英名)
La Palma(ラ・パルマ)島の Cumbre Vieja(クンブレ・ビエハ)火山における山体崩壊の可能性Canary Islands(カナリア諸島)、特に La Palma(ラ・パルマ)島の Cumbre Vieja(クンブレ・ビエハ)火山における山体崩壊の可能性については、かつて「超巨大津波(メガツナミ)」を引き起こすという説が広く知られましたが、現在の科学的知見では、そのリスクは極めて低い(または誇張されている)とされています 。
1. 山体崩壊と巨大津波の説(2001年の研究)2001年に発表されたWard & Dayによる研究では、Cumbre Vieja(クンブレ・ビエハ)火山の西側の斜面(約$500\text{km}^3$)が噴火によって一気に崩落した場合、高さ数十メートルの巨大津波が発生し、Atlantic Ocean(大西洋)を越えてアメリカ東海岸にまで壊滅的な被害を及ぼすという予測が示されました 。この説はメディアやドキュメンタリーで大きく取り上げられ、注目を集めました 。
2. 現在の科学的コンセンサスその後の多くの研究や専門機関(USGS、INVOLCAN等)によって、2001年の予測モデルは「極端な仮定」に基づいていると否定されています 。崩落の形態: 近年の海底堆積物の調査から、巨大な岩塊が一気に崩落するのではなく、数回に分かれた小規模な崩落として起こる可能性が高いことが判明しました 。これにより、発生する波のエネルギーは大幅に抑制されます 。構造の安定性: 現時点での地質学的解析によれば、火山の構造は安定しており、即座に大規模な山体崩壊が起こる予兆は見られません 。影響範囲の修正: 最新のシミュレーションでは、仮に崩落が起きても、遠方に到達する津波の高さは嵐による高潮と同程度の1〜2メートル程度に留まると予測されています 。
3. 直近の火山活動(2021年の噴火)2021年9月に La Palma(ラ・パルマ)島で発生した50年ぶりの噴火の際にも、この山体崩壊説が再燃して住民に不安を与えましたが、スペイン政府や米国の津波警報センターは「津波の危険はない」と公式に否定しました 。この噴火では溶岩流による甚大な建物被害(約2,900棟以上)はありましたが、山体全体の崩壊には至りませんでした 。
第2章 カナリア諸島のグリニッジ天文台の移転先
グリニッジ天文台(王立グリニッジ天文台)そのものは、歴史的にいくつかの場所を移転していますが、カナリア諸島に関連するのは、天文台の主要な機能や望遠鏡が移された**「ロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台」**です。
具体的には、カナリア諸島のラ・パルマ島に位置しています。
移転の経緯と場所の詳細
グリニッジ天文台は、ロンドンの光害や大気汚染を避けるため、段階的に移転が行われました。
1948年〜1957年: ロンドンのグリニッジから、イギリス南部のハーストモンソー(イースト・サセックス州)へ移転。
1980年代: ハーストモンソーも天候が不安定だったため、より観測条件の良いスペイン領カナリア諸島のラ・パルマ島に新しい観測拠点を構築。
移転先: ロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台(Observatorio del Roque de los Muchachos / ORM)
主要な装置: かつてイギリスにあったアイザック・ニュートン望遠鏡 (INT) などがこの地に移設されました。
1990年: 天文台の本部はイギリスのケンブリッジに移転しましたが、1998年に組織としての王立グリニッジ天文台は閉鎖されました。
現在の状況
現在、元のグリニッジの場所は「王立天文台(旧王立天文台)」として博物館になっており、本初子午線(経度0度)の観光名所として親しまれています。一方で、実際の天体観測機能の多くは、このラ・パルマ島にある国際的な天文台群の中に引き継がれています。
Nights in the life of an astrophysicist この動画では、天体物理学者がラ・パルマ島にあるアイザック・ニュートン望遠鏡をリモートで操作して観測を行う様子が紹介されており、現在の天文台の運用状況がよくわかります。
カナリア諸島のラ・パルマ島にある「ロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台」で行われている主な研究や観測内容
この天文台は、北半球ではハワイのマウナケア山に次ぐ非常に優れた観測拠点として知られています [
1. 太陽観測
スウェーデン太陽観測望遠鏡: 能動光学(鏡の歪みを補正する技術)を採用しており、太陽観測用としては世界最高クラスの分解能を誇ります
2. 巨大望遠鏡による天体観測
カナリア大望遠鏡 (GTC): 口径10.4mという非常に大きな望遠鏡で、2007年から本格的な観測が行われています
アイザック・ニュートン望遠鏡: もともとイギリスのグリニッジ天文台にあったものが移設され、この天文台の歴史の始まりとなりました
3. ガンマ線・高エネルギー天体物理学(日本の参画)
チェレンコフ・テレスコープ・アレイ (CTA): 東京大学宇宙線研究所など、日本の研究チームも深く関わっています
研究対象: ブラックホールや中性子星などから発生する非常にエネルギーの高い「ガンマ線」を観測しています
仕組み: ガンマ線が地球の大気にぶつかった時に出る「チェレンコフ放射」という微弱な光を捉えることで、宇宙の謎を探っています
4. 多国籍な協力
この天文台は、スペインだけでなくイギリス、スウェーデン、ドイツ、イタリア、そしてアメリカや日本など、多くの国が共同で研究・運営を行っている国際的な観測拠点です。
これには、時代の変化に伴う大きな理由が2つあります。
1. 「星」から「原子」への主役交代
昔は、星が南中する(真南に来る)瞬間を観測して時計を合わせていましたが、現在は原子時計(セシウム原子の振動を利用した時計)がその役割を担っています。
現在は世界中にある原子時計のデータを集約して「世界時」を決めており、巨大な望遠鏡で星を見て時間を計る必要がなくなりました。
2. 純粋な「宇宙探究」への特化
ラ・パルマ島にある現在の天文台は、時間を計るための施設ではなく、「宇宙の謎を解き明かす」ための純粋な研究施設です。
ブラックホールの観測、宇宙の始まりの探究、太陽の活動調査など、より遠く、より深い宇宙の現象を捉えることが主な仕事になっています。
かつての「報時」の面影
ロンドンの旧グリニッジ天文台には、今も屋根の上に**「タイムボール(報時球)」**という赤い玉が設置されています。かつては毎日午後1時ちょうどにこの玉を落下させ、テムズ川を通る船乗りたちに正確な時間を知らせていました。
(続く・・)
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