こんにちは、利用者Kです。
私は以前、寮生活をしていました。
寮では、みんなで順番に食事を作る「食事当番」がありました。
料理が得意な人もいれば、苦手な人もいます。
私が先輩になってからは、後輩が作った料理を見て、「これで大丈夫か」と確認することもありました。
ある日のことです。
食事当番の後輩が、味噌汁を作っていました。
慣れない手つきで一生懸命作ったのでしょう。
味見をしてみると、少し味が薄い。
おかずのほうも、形が崩れていて、お世辞にもきれいな出来とは言えませんでした。
後輩は、少し心配そうな顔で私を見ていました。
「どうでしょうか……」
私はそういう時「100%」次のような肯定の言葉をかけてあげました。
「うん、良いですね。大丈夫ですよ」

そう言うと、後輩の顔が、ふっと明るくなりました。
その顔を、私は今でも覚えています。
そのあと、誰もいなくなってから、私は味噌汁に少しだけ味を足したこともありました。
それでいいと思ったのです。
わざわざ「味が薄いよ」と言って、せっかく一生懸命作った後輩をがっかりさせなくてもいい。
足りないところは、気づいた人が、そっと手を添えればいい。
寮生活では、そんなことが何度もありました。
料理が少しくらいうまくできなくても、
「大丈夫ですよ」
と、大目に見る。
そして、本当に困るところだけ、こちらでそっと直しておく。
不思議なもので、そうしていると後輩たちは、いつも笑顔でいてくれました。
今になって思うと、私が守りたかったのは、料理の出来よりも、その笑顔だったのかもしれません。

人は誰でも失敗します。
一生懸命やっても、うまくいかないことがあります。
そんなときに、
「大丈夫」
と言ってくれる人が一人いるだけで、心はずいぶん軽くなるものです。
大目に見るというのは、ただ失敗を見逃すことではないのだと思います。
「失敗しても大丈夫だよ」
と、相手をそっと包んであげることなのかもしれません。
あの日、味噌汁に少しだけ味を足したことを、ときどき思い出します。
後輩は、たぶん知らなかったと思います。
でも、それで良かったのです。
誰にも気づかれなくても、そっと誰かの失敗を支える。
そんな優しさを、私は寮生活から教えてもらったような気がします。
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